0.6mから2.9mまで、同じ設計図で作れる魚型ロボット「ScaFi」。変えるのは尾のロッド径だけ
EPFLらの研究チームが、モーター1基で泳ぐ魚型ロボットを、0.6m・1.1m・2.9mの3サイズで同一設計から製作した。サイズに応じて変えるのは尾を構成するグラスファイバーロッドの径だけ。論文は npj Robotics に掲載された。
EPFL の研究チームが、モーター1基で泳ぐ魚型ロボットを 0.6m・1.1m・2.9m の3サイズで、同じ設計から作り分けた研究を発表した。論文「ScaFi: length-scalable, compliant, parametric robotic fish design for operation in multiple environmental niches」は npj Robotics(vol.4, article 38, 2026)に掲載されている。
水中の環境モニタリングでは、小川を見るのと湖を見るのとで必要な機体が違う。筆頭著者の Nana Obayashi 氏は「私たちが関心を持つ環境は一つのサイズで来ない。だから道具もそうであるべきではない」と述べている。
モーター1基でS字を作る
構造は単純だ。前部は剛体で、尾はグラスファイバーのロッドで構成される柔軟部。モーター1基が2本の腱を引き、腱は尾の末端近くで交差する。この交差によって、魚が泳ぐときに見せるS字のカーブが生まれる。
魚型ロボットでは、関節を複数持たせてサーボで各節を駆動する方式が一般的だった。節を増やせば波形の再現度は上がるが、機体が大きくなるほど配線・防水・重量が効いてくる。ScaFi の設計は逆方向で、構造の柔らかさに波形を作らせて、駆動を1系統に減らす。
スケールさせるときに変えるもの
この研究の主眼は「大きさを変えても同じ設計図で作れるか」にある。3機を作ったうえで、サイズに応じて変更が必要なのは尾のロッドの径だけだと報告されている。ロッドを比例して太くすることで、機体が大きくなっても尾の曲がり方を揃えられる。モーターと腱の機構自体はサイズによらず同一だ。
パラメトリック設計としては素直な結論だが、これが成立することの意味は小さくない。設計を一つ持っておけば、対象の水域に合わせてサイズを選び、必要な部材だけを差し替えて製作できる。小川用と湖用でゼロから作り直す必要がなくなる。
効率は素直にスケールしなかった
一方で、うまくいかなかった部分も明示されている。小型2機(0.6m と 1.1m)はエネルギー効率が近い値を示したが、最大の2.9m機は、より強力なモーターを必要とし、効率は一貫して低かった。
研究チームは、この効率低下について抗力と慣性がどう寄与しているかは明確でないとしている。つまり「形は同じ設計で作れるが、性能は同じようにはスケールしない」ことが、実測として残っている。流体中では、大きさが変わるとレイノルズ数が変わり、支配的な力の種類が移る。設計図の共通化と性能の共通化は別問題だ、という当たり前のことが、3機を実際に作ることで数字として出た形になる。
作る側から見て
この研究が個人のものづくりの文脈で参照しやすいのは、部品点数が少ないことと、変更点が1パラメータに絞られていることの2点だ。モーター1基、腱2本、ロッド数本という構成は、市販部材で追試しやすい範囲にある。
環境モニタリングという用途も、地域の川や池を継続的に見たい人にとっては現実的だ。ただし実運用では、防水の耐久性、バッテリー、回収の手段、そして生物への影響といった、論文の範囲外の設計が必要になる。効率が大型機で落ちる点も、稼働時間に直結する。
論文の共著者には EPFL のほか、クイーンズランド工科大学の研究者が名を連ねている。設計と評価のデータが公開されている研究なので、同じ構成を別の水域・別のサイズで試したときに何が変わるかを、追試で確かめられる余地がある。