研究と社会

北京の世界ヒューマノイドロボット運動会、2回目は666チーム2056台に。100mは1年で21.50秒から8.64秒へ

2026年8月22日から26日まで、北京の国家スピードスケート館で第2回世界ヒューマノイドロボット運動会が開かれた。6大陸16か国から666チーム・2056台が参加し、51種目1301試合を実施。100m走の記録は前回大会の21.50秒から8.64秒に短縮された。

2026年8月22日から26日まで、北京の国家スピードスケート館「氷のリボン」で第2回世界ヒューマノイドロボット運動会が開かれた。北京市の発表によれば、6大陸16か国から666チーム・2056台が参加し、51種目・1301試合が行われた。

100m走で大会記録を出した Tiangong Ultra(CGTN)

前回大会(2025年8月)は280チーム・500台超・26種目だったので、1年で規模が2倍以上になった計算だ。国内勢の内訳は157企業と200の大学・研究機関で、641チーム・1975台。中国の重点大学制度「985工程」の指定校のうち27校が参加している。

100m走:21.50秒 → 8.64秒

数字として目を引くのは100m走だ。北京人形机器人创新中心が開発した Tiangong Ultra が、大会中に9.39秒 → 8.86秒 → 8.64秒と記録を更新して大型部門で優勝した。小型部門の優勝記録は11.98秒だった(新華社)。

第1回大会の100m優勝記録は21.50秒だったので、1年で半分以下になっている。400mは38秒15、1500mは2分21秒64、走り幅跳びは7m97という記録も出た(新華社の競技報道)。

この8.64秒という数字は、ウサイン・ボルトの100m世界記録9秒58を下回る。ただし両者を同じ土俵で比較できるかは別の話だ。人間の陸上競技は、スターティングブロックからの静止スタート、反応時間の計測と不正スタートの規定、風速の上限、トラックの規格が細かく定められている。ロボット側の計測条件がどこまで揃えられているかについて、公開されている情報は限定的で、レーンやスタート方式、計時の起点をそのまま人間の記録と並べる根拠は示されていない。

「走れる」と「止まれる」は別

競技を追った報道では、ゴール後に減速しきれない機体が目立ったことが話題になった。この点について新華社は、天骄チームのエンジニア高大偉氏の「性能を極限まで引き出すために折衷案を採った」というコメントを伝えているが、停止動作の技術的な限界そのものについての説明は公開されていない。

高速走行時の減速は、加速より難しい課題として知られている。人間の短距離走者もゴール後に20〜30mかけて減速するが、これは全身の姿勢制御と足裏の摩擦を連続的に使い分けることで成り立っている。二足歩行ロボットで同じことをするには、走行時の高い運動量を、転倒せずに数歩で吸収する制御が要る。記録の更新が続く一方で、この部分が公開情報から読み取れないことは、競技の完成度を測るうえで留意点になる。

種目の半分近くは「実務」側

この大会をスポーツイベントとしてだけ見ると、構成を見誤る。51種目の内訳は競技30種目・シナリオ21種目で、後者には家庭やホテルでのサービス、工業作業、消火・救助といった実務想定の課題が含まれる。卓球、太極拳、フリースタイルボクシング、器用ハンドによる電動工具の組み立てといった種目も並ぶ。

つまり、走る・跳ぶといった記録競技と、現場作業を模した課題が同じ大会に同居している。参加者の内訳が企業157社に大学・研究機関200という比率であることも合わせると、この大会は研究発表の場であると同時に、産業向けの見本市としての性格を持つ。主催に北京市の経済情報化局・体育局や国有資産会社、朝陽区が名を連ねているのも、産業政策としての位置づけを示している。

RoboCupとは何が違うか

同じ2026年、RoboCup では初めて11対11のヒューマノイドサッカーが行われた。両者は「ヒューマノイドの競技会」という点で似ているが、設計思想が異なる。

RoboCup は1997年に「2050年までに人間のワールドカップ王者に勝つ」という長期目標を置き、自律性・協調・汎用性を問う標準問題として設計されてきた。試合中に人が操作しないことが前提で、勝敗はソフトウェアの差として読める。

一方の世界ヒューマノイドロボット運動会は、種目を細かく分けて個別の性能を数字で並べる設計になっている。100m走の記録は、機体・アクチュエータ・制御の到達点を一つの数字で示せる点で分かりやすく、産業の進捗を対外的に見せる指標として機能する。どちらが優れているという話ではなく、測っているものが違う。

日本の文脈で見るとき、参照すべきは記録そのものより参加構成のほうだろう。企業157社と大学200機関が同じ会場で同じ課題に取り組み、そこに自治体の産業部門が主催として入る。この座組みが1年で規模を倍にした事実は、技術以前に、どういう場を用意するかという設計の問題として読める。


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