形が変わっても配線が切れない3Dプリント積み木。MIT・東大らの「Bifur-circuits」
MIT の研究チームが、3Dプリントしたブロックを組み合わせて形を変えても電気的な接続が切れないメタマテリアル「Bifur-circuits」を発表した。外部配線なしで自分がどの形になったかを検知でき、1万回超の圧縮でも導通を保つ。東京大学とミシガン大学が共同研究に参加し、資金は科学技術振興機構が出している。
MIT の研究チームが、3Dプリントしたブロックを組み合わせ、形を変えても電気的な接続が切れない構造「Bifur-circuits」を発表した。論文「Bifur-circuits: Interactive and Modular Metamaterial Building Blocks Via Bifurcated Geometries」は ACM の UIST(ユーザーインターフェースソフトウェア技術シンポジウム)で発表される。

共同研究には東京大学とミシガン大学が参加しており、資金は日本の**科学技術振興機構(JST)**とバーレーン皇太子国際奨学金プログラムが出している。
「分岐」で形を増やす
名前にある bifurcation(分岐)は、力がある閾値を超えたときに挙動が急に変わる現象を指す。この構造では、加えた力が閾値を超えるとブロックが支点まわりに回り、別の安定した姿勢にスナップする。
あらかじめ決めた数個の形の間を行き来するのではなく、ブロックを1つ足すたびに取りうる配置の組み合わせが増えていく。研究チームの説明では、この増え方は指数的で、比較的単純な組み立てから大きな設計空間が生まれる。
もう一つの要点は自己形状認識だ。隣り合うブロックを接続して回すと、その組み合わせに固有の回路が閉じる。つまり構造自身が「いま自分はどの形になっているか」を、外部にセンサーや配線を追加せずに読み取れる。形状変化するデバイスでは、配線が可動部をまたぐことが故障点になりやすいが、その配線自体を形状検知に使う設計になっている。
何で作り、どこまで持つか
製造にはマルチマテリアル3Dプリントを使い、構造材と導電材を一体で出力する。MIT 機械工学の Marwa AlAlawi 氏は「導電材料は、こちらが回避しなければならない制約だった」と述べており、導電材の物性が設計上の主な制限になっていることがうかがえる。
耐久性については、1万回を超える圧縮サイクルで導通の劣化が見られなかったと報告されている。形状変化を前提とする構造で繰り返し使用に耐えるかは実用の分かれ目になるため、この数字は評価の基準になる。
デモとして示されたのは、収納付きのティーテーブルに変形し、さらに平らに畳んで運べる椅子と、形の変わるゲームコントローラー。いずれも家具・入力機器という、人が日常的に触れる物のスケールで作られている。
個人のものづくりから見た位置づけ
この研究が置かれているのは、MIT CSAIL の Human-Computer Interaction グループ(共同上席著者は Ticha Sethapakdi 氏と Stefanie Mueller 氏)で、産業用の構造材料というよりインタラクティブな物をどう作るかという文脈にある。UIST という発表先もそれを示している。
ただし、これを個人の工房で再現できるかは別だ。マルチマテリアル3Dプリンタは、構造材と導電材を同時に扱える機種が前提になり、家庭向けのFDM機やレジン機の延長線上には無い。導電フィラメントの抵抗値や、繰り返し変形時の劣化も、機種と材料に強く依存する。論文が示した1万回という数字は、同じ材料・同じプリンタでの値として読む必要がある。
一方で、形状変化する物が自分の形を知るという考え方自体は、材料が変わっても持ち込める。可動部にセンサーを足すのではなく、構造そのものに読み取り機能を持たせる設計は、ロボットのグリッパーや折り畳み機構でも応用の余地がある。次の一手として研究チームは、応用範囲の拡大、インタラクティブ性の向上、別のメタマテリアル形状の検討を挙げている。
日本の文脈で見ると、JST が資金を出し東京大学が加わった研究が UIST で発表されるという構図そのものが、デジタルファブリケーションとHCIの接点における国際共同研究の一例になっている。