産業と実装

Waymo、東京の3日後にシンガポール進出を発表。2027年は人が運転して道を覚え、無人配車は2028年

Waymoが2026年9月17日(米国時間)、シンガポールで完全自動運転の配車サービスを2028年に始める計画を発表した。2027年は訓練を受けた専門スタッフが手動で走る準備期間にあたる。陸上交通庁(LTA)はWaymoをComfortDelGro、Grabに続く自動運転事業者と位置づけ、影響を受ける運転手を再訓練し支える能力を超えて、自動運転の展開を先行させないと明記した。

Waymo は2026年9月17日(米国時間)、シンガポールへの進出を発表した。運輸省(MOT)と陸上交通庁(LTA)と組み、運転席に人のいない全電動の配車サービスを 2028年 に Waymo アプリで始める。その3日前には、日本交通・GO と東京で2027年に無人配車を始める準備に合意したと発表したばかりだ。アジアの2都市が、1週間のうちに Waymo の予定表に載った。

シンガポールのマリーナ・ベイを背景にした Waymo の Jaguar I-PACE(Waymo)

2027年は準備期間、利用者を乗せるのは2028年

東京の「2027年」と並べると紛らわしいが、シンガポールの発表で2027年に置かれているのは、利用者を乗せない準備の段階だ。予定は3段階で書かれている。

時期Waymo の発表にある内容
今後数カ月全電動の Jaguar I-PACE の初期車両がシンガポールに到着し、現地の運営体制をつくる
2027年(準備期間)訓練を受けた自動運転の専門スタッフが手動で走り、Waymo Driver を現地の道路形状やモンスーンの気象などに合わせる
2028年(商用開始)Waymo アプリで、完全自動運転の配車を一般の利用者に開く

LTA の9月18日の発表も同じ時期を示し、車両は「今後数カ月で到着し、2027年に初期の手動運転を行う」、Waymo は「2028年の商用配車サービス開始を目指す」と書く。車両はWaymo のシンガポール向けページによれば第5世代の Waymo Driver を積んだ I-PACE で、将来は別の車種も加えるという。

書かれていないこともある。初期の台数、運行区域、料金、そして2028年の開始時点で安全要員が乗るかどうかは、Waymo と LTA のどちらの発表文にもない。区域については、シンガポールのMothershipが、シオウ運輸相が発表イベントで「まず西部のラブラドール・ハーバーフロント地区から展開する」と述べたと報じている。Waymo 自身は「完全自動運転の技術をどの都市に持ち込むにも、厳密さと忍耐、規制上の承認、そして幅広い対話と協力が要る」と書いており、2028年という時期も承認を前提にした目標だ。

LTA は「3社目の自動運転事業者」と位置づけた

LTA の発表は短い。Waymo を「ComfortDelGro と Grab に続く、シンガポールで最も新しい自動運転事業者」と呼び、世界の有力な自動運転企業を呼び込み、競争のある産業を育てる長期計画の一部だと説明する。LTA は、すべての展開が安全と規制の要件を満たすよう Waymo と緊密に協力するとしている。

先行する2社は、郊外のニュータウンで定時定路線のシャトルを走らせている。LTA によれば、プンゴル地区の自動運転シャトルは、Grab が WeRide の技術で2路線、ComfortDelGro が Pony.ai の技術で1路線を担う。LTA は、どの段階でも安全要員が常に同乗するとしている。2026年4月1日からは Grab の2路線に一般の人も乗れるようになり、この2路線の有料運行は2026年半ばから1人4シンガポールドルの均一運賃で始まる予定とされた(ComfortDelGro の路線は3月時点でまだ習熟走行の段階だった)。Waymo が目指す、呼べばどこへでも来る無人の配車とは、形がまだ違う。

制度面では、LTA の自動運転車のページによると、公道に出る自動運転車はすべて、南洋理工大学と共同で設けた試験センター CETRAN で安全評価を受ける必要がある。第三者賠償と物損をカバーする保険、事故調査用のデータレコーダー(ブラックボックス)の搭載も条件になる。試験から本格運行までを扱う自動運転車の道路交通規則は2017年に定められた。国と都市がほぼ一致する都市国家で、LTA が一つの窓口として評価から配備までを見る構造だ。

サンフランシスコ・ベイエリアで Waymo の車両の前に立つ、Waymo 共同CEOのテケドラ・マワカナ氏とシンガポールのジェフリー・シオウ運輸相(Waymo)

運転手の転職支援を、自動運転の前に置く

LTA の発表でいちばん具体的なのは、技術ではなく運転手についての一文だ。「政府は、影響を受ける運転手を再訓練し支える能力を超えて、自動運転の展開を先行させることはしない」。

その土台として示されたのが、運輸省が2026年7月7日に発表した転職支援策だ。人材省、全国労働組合会議(NTUC)、Grab、ComfortDelGro と共同でつくった。中身は3つある。

  • 転職プログラム: 自動運転分野の「AV スペシャリスト」課程を2026年第3四半期に開き、セーフティオペレーター、遠隔オペレーター、フリート管理といった職に就けるようにする。研修期間中は雇用主に最大90%の給与補助が出る。訓練は Grab の研修部門 GrabAcademy が担う。バス運転士へ移る道も設ける
  • 訓練手当: 2027年1月から3年間の試行で、約2,000の対象講座の受講に1時間20シンガポールドル、上限80時間(1人最大1,600シンガポールドル)を支給する
  • 相談と周知: 政府と NTUC が就職フェアや相談の機会を増やす

Waymo 側も、マワカナ共同CEOのコメントで「現地で高度な技能を要する運営の雇用をつくる」ことに触れている。準備期間の2027年に車を手で運転し、道を覚えさせるのも、こうした専門スタッフの仕事になる。

東京は2027年、日本のレベル4はまだ低速の定路線が中心

Waymo は発表文で、シンガポールと並んで東京、ロンドン、ミュンヘンでの開業準備を進めていると書いた。このうち東京は、9月14日(米国時間)の発表で、日本交通・GO と組んで2027年に無人の配車を始める準備で合意したとしている。2025年に東京で走り始めてから、日本交通の乗務員が監視役として乗り、狭い生活道路や人混みでの走行を重ねてきた。GO と Waymo の両方のアプリで呼べるようにし、初期の台数から約100台まで段階的に増やす計画で、時期は国と地方の当局の承認と検証の完了が条件だ。日本交通の若林泰治社長は、人が運転するタクシーと「共存しながら」将来の運転手不足に備える取り組みだとコメントしている。

「自動走行 実証実験中」の表示をつけ、東京で走る Waymo・GO・日本交通の車両(Waymo)

日本の制度はシンガポールより層が多い。運転者のいない走行には、車両側で道路運送車両法にもとづくレベル4の認可が要り、運行側で道路交通法の特定自動運行の許可(2023年4月施行)が要る。後者は都道府県公安委員会が運行区域ごとに出す。

実装の規模もまだ小さい。国土交通省の2026年1月29日の資料によれば、運転者のいないレベル4の移動サービスはバスやカートなど9カ所で、同じ資料は「低速で定時定路線型のみ」だったこれまでの段階から、国内自動車メーカーの参入で次の段階へ移るとしている。資料の後も、たとえば関東運輸局が2026年3月25日に認可した車両は、茨城県常陸太田市の全長約200mのルートを最高時速18kmで走る。政府は2027年度までに無人の移動サービスを100カ所以上で実現する目標を掲げ、2030年度の自動運転サービス車両数の目標を1万台としている。同じ1月の資料では、Waymo の東京での無人タクシーの開始時期は「非公表」と書かれていた。9月の発表で、そこに2027年という目標が入ったことになる。

無人化の順番は、都市ごとに違う

ロンドンでは、Wayve と Uber が9月3日に安全ドライバー同乗の配車を始め、無人化の許可を待たずに利用者を乗せ始めた。Waymo はロンドンでも、無人サービスの許可を取ってから乗せる順番をとっている。米オースティンでは Tesla がハンドルのない Cybercab の運行を始め、連邦当局が適合認証の監査に入った。欧州ではプンゴルのシャトルも手がける Pony.ai が、Uber と5都市で2,000台超の計画を示している。

シンガポールの特徴は、規制当局が技術の評価と同じ発表の中で、運転手の仕事を先に守ると書いたことにある。Waymo が発表で強調した安全の数字、つまり人の運転と比べて負傷を伴う事故が94%少ないという値は、同社が米国の運行都市で集計したものだ。赤道に近い都市のスコールと左側通行の道で、2027年の1年間の手動運転がどれだけの準備になるのか。2028年までに、台数と区域の数字が出てくるかどうかが次の確かめどころになる。


出典