産業と実装

ロンドンのロボタクシー一番乗りはWayveとUber。Waymoより先に、安全ドライバー同乗で走り出した

WayveとUberが2026年9月3日、ロンドンで自動運転車の配車を始めた。英国で一般の利用者が乗れる初の自動運転配車で、区域は空港を除くロンドン。ただし免許を持つドライバーが同乗する試験運行の枠組みで、台数は「少数」とだけ公表されている。無人化には別の許可が要る。

英国で一般の利用者が乗れる初めての自動運転配車は、ロンドン生まれの Wayve が担った。Uber と Wayve は2026年9月3日、ロンドンで自動運転車の配車を始めた。2025年10月に「2026年に完全無人サービスを始める」と発表していた Waymo より先に、利用者を乗せ始めたことになる。

ただし運転席には人が座っている。両社はこれを「監視付き自動運転配車(supervised autonomous rides)」と呼び、TfL(ロンドン交通局)の免許を持つ訓練済みドライバーが同乗する。

ロンドン市内の横断歩道に停車する、Wayve AI Driver を搭載した Ford Mustang Mach-E(Wayve)

利用者は「自動運転車に当たるかもしれない」形で乗る

専用アプリや専用料金はない。UberX、Uber Electric、Uber Comfort を頼んだ利用者に、Wayve の車両が割り当てられることがある。運賃は通常どおりアプリに事前表示され、追加料金はかからない。車が着く前に、自動運転ではない車両への切り替えも選べる。

車両は電気自動車の Ford Mustang Mach-E に Wayve AI Driver と周囲を捉えるセンサーを載せたもの。Uber が設計した車内画面は64言語に対応し、乗車開始の操作と車両の予定経路の表示ができる。区域は「空港を除くロンドン全域」で、Wayve のサービスページも「Greater London、空港への移動を除く」と書く。

Uber アプリの設定で自動運転車を希望した人は、発表時点で14万人を超えた。8月5日の時点では「8週間で10万人超」だった。

一方で台数は書かれていない。発表文は「この初期段階は少数の車両から始め、需要、準備状況、規制に合わせて慎重に増やす」とするのみだ。安全ドライバーが介入した頻度や、自動運転での走行距離も、両社の発表には出てこない。

土台はAPS許可ではなく、タクシー免許と試験運行の行動規範

今回の運行は、2024年自動運転車法(Automated Vehicles Act 2024)による自動旅客サービス(APS)許可を使っていない。制度の枠組みはPony.ai と Uber の欧州展開を扱った記事で触れたとおりで、ここでは今回実際に使われた2つの仕組みを見る。

1つ目は、ロンドンの個人ハイヤー(PHV)免許だ。TfL は2026年8月5日、Wayve の Mach-E 複数台に PHV 免許を出した。PHV の運行には、配車事業者、ドライバー、車両の3つが同じ免許当局の免許を持つ「トリプルロック」が必要になる。事業者免許は Uber がすでに持ち、ドライバーも TfL 免許を持つ。車両への免許でこれが揃った。TfL は車両を検査し、方針と安全基準を満たすことを確認したとされる。

2つ目は、運輸省の自動運転車の試験運行に関する行動規範(2026年6月24日更新)だ。試験運行に許可や保証金は要らない。その代わり、いつでも運転を引き継げる状態のドライバーを乗せることが求められる。Wayve の発表も、ドライバーは「必要に応じて支援し、運転を引き継ぐ」と書く。

既存のハイヤー免許に自動運転の試験運行を重ねた形で、新しい許可を待たずに始められた理由はここにある。

TfL の個人ハイヤー免許を取得した Wayve の自動運転車両(Wayve)

運転席を空けるには、2つの許可と自治体の同意が要る

安全ドライバーなしで利用者を運ぶ道は、運輸省が2026年3月31日に公開した自動運転車パイロット制度の申請者向け案内に書かれている。車両側には車両承認と車両特別令(VSO)が要り、承認の経路は車両認証庁(VCA)に相談するよう案内されている。サービス側には APS 許可が要り、申請を受けて手続きを進めるのは運転者・車両基準庁(DVSA)だ。DVSA は許可を出す前に、関係する警察との協議も支える。

もう1つ条件がある。自治体の役割を定めた案内によれば、APS がタクシーや PHV に似たサービスであれば、運行区域の免許当局それぞれの同意が要る。当局の持ち時間は6週間で、期限内に回答がなければ同意したとみなされる。

Wayve と Uber は、無人化の時期も APS 許可の申請状況も公表していない。今回の9月3日の発表文にも、無人運転への移行時期は書かれていない。

日付出来事
2024-08-29Uber が Wayve に戦略出資(シリーズCの追加)。将来のレベル4車両の配備で提携
2025-06-10ロンドンでのレベル4公道試験を計画と発表。英国政府は商用パイロットを2026年春に前倒し
2026-02-25Wayve がシリーズDなど総額15億ドルを調達(ポストマネー86億ドル)。Uber も参加し、複数年の配備を支える追加資金を約束。10超の市場への展開を計画
2026-04-14Waymo がロンドンで自動運転走行を開始(専門スタッフが運転席に同乗)
2026-06-17Stellantis・Wayve・Uber がレベル4ロボタクシーで提携
2026-08-05TfL が Wayve の車両に PHV 免許
2026-09-03ロンドンで監視付き自動運転配車を開始

Waymo は無人を目指し、Wayve は有人監視で先に出た

Waymo は2025年10月、フリート運用を Moove に任せ、2026年にロンドンで運転席に人がいないサービスを始めると発表した。2026年4月14日には、訓練を受けた専門スタッフが運転席に座る形で自動運転走行を始めている。英国向けページはウェストミンスターやカムデンなど19の自治区とシティ・オブ・ロンドンを試験区域に挙げ、商用の配車はまだ提供していないと明記する。商用サービスに必要な許可は、国や地域の関係者と調整しながら取得を目指すとしている。

2社の順序は逆だ。Waymo は米国での無人運行の実績を持ち込み、無人サービスの許可を取ってから利用者を乗せる。Wayve は既存のハイヤー免許で先に利用者を乗せ、ロンドンの道でデータを積みながら無人化の許可を目指す。Wayve は高精度地図や手書きのルールに頼らず、経験から学ぶ AI ドライバーを掲げ、2018年からロンドンで訓練してきた。

Uber にとってロンドンは、8月19日にアプリ配車を始めたザグレブに続く欧州の2都市目になる。どちらも免許を持つ人が運転席で監視する段階から始めた。Wayve との提携は、ロンドンを皮切りに世界12市場に Wayve の車両を配備する計画で、2026年後半には東京で日産リーフを使った配車も予定されている。

乗る側から見れば、自動運転車が来るかどうかは配車時に分かり、嫌なら切り替えられる。台数、介入の頻度、無人化の申請時期。次に公表されるのはどれになるだろうか。


出典