GENIAC採択の1週間後、ugoが双腕ロボ「ugo Nova」を発表。データ収集からモデル開発までを請け負う
ugoが2026年9月16日、国内で設計・製造する車輪移動型の双腕セミヒューマノイド「ugo Nova」と、データ収集キット・収集代行・モデル開発支援を束ねた「ugo Physical AI Fabric」を発表した。2027年の量産開始を予定し、AIRoAの国産汎用ロボット開発コンペティションにも提案する。価格は公表されていない。
ロボット基盤モデルを現場で使えるものに育てるには、実機で集めた作業データが要る。そのデータを集めるロボットを、国内で設計して国内で作る。東京・東神田のugo(ユーゴー)が出した答えは、脚を持たず、車輪の上に上半身を載せた双腕ロボットだった。
ugoは2026年9月16日、セミヒューマノイド「ugo Nova」と、Novaを核にしたプロダクト・サービス群「ugo Physical AI Fabric」を発表した。Novaは2027年の量産開始を予定している。1週間前の9月9日には、双腕セミヒューマノイド向けの触覚付きモデルの開発が経済産業省・NEDOのGENIACに採択されたばかりだった。

全22自由度、脚の代わりにメカナム4輪
製品ページの仕様によれば、Novaの駆動部は頭部2軸、腕部が片腕7軸+1軸2指のハンド、腰部4軸(旋回1軸・屈伸3軸)で、合計22自由度になる。移動はメカナムホイールの4輪で、その場で向きを変えるだけでなく、旋回せずに真横へ動ける。昇降のストロークは350mm、アームのリーチは843mmで、床付近の物から頭上の棚まで扱うとしている。
| 項目 | ugo Nova の公表値 |
|---|---|
| サイズ | 高さ126〜162cm(折りたたみ時〜最大延伸時)、幅56cm、奥行65cm |
| 重量 | 約100kg |
| 自由度 | 全22(頭部2、腕部7×2+ハンド1×2、腰部4)+メカナム4輪 |
| 可搬重量 | 片腕最大4kg、双腕最大10kg(所定の作業領域での双腕) |
| カメラ | 頭部ステレオカメラ×1、ハンドRGBカメラ×2 |
| 計算機 | NVIDIA Jetson Thor |
| アーム制御周期 | 100Hz |
| 連続稼働/充電 | 約6時間(LiFePO4 50.6V 22Ah)/約2.5時間 |
| 移動速度/段差 | 約0.4〜3.6km/h/約1cm |
| 価格・販売開始 | 公表なし(量産開始は2027年予定) |
移動速度、登坂性能(約5度)、段差乗り越え(約1cm)、充電時間は、既存の「ugo Pro R&D」と同じ値だ。ugoが巡回・点検・案内で運用してきた車輪台車の系譜の上に、上半身を作り直した形と読める。重さはugo Pro R&Dの約54kgに対して約100kgある。代表取締役CEOの松井健氏はリリースで、Novaを「既存機種の延長や改良ではなく」、「アーキテクチャから再設計した」機体だと説明している。
段差乗り越えが約1cmという値からは、Novaが想定する現場も読み取れる。平らな床の工場や倉庫の中で、人の作業台の前に立つロボットだ。

操作すると、その操作がそのまま教師データになる
Novaの売りは、届いてすぐにデータを集められることだという。頭部とハンドにカメラを標準で載せ、バイラテラルコントローラーやVRコントローラーでの遠隔操作に対応する。オペレーターがNovaを操って作業を実演すると、映像、関節情報、トルク、エンドエフェクタの位置、操作指令が時刻をそろえて記録される。集めたデータでロボット基盤モデルを追加学習し、そのモデルを同じNovaに載せて実環境で評価する。「データを集める」ことと「モデルを動かす」ことを1台で担う、というのがugoの説明だ。

リーダー側のバイラテラルコントローラーはアスラテックが開発した。意匠デザインはGK京都が担当し、機構設計と製造はugo自身が行う。ugoは9月9日、手指のトラッキンググローブ「ContactGlove」を作るMelt Interface Technologiesとも、データ収集デバイスの共同開発で覚書を結んでいる。こちらは2027年中の発売を目指す。
4つの層で、ロボット・データ・モデルを一式で売る
Physical AI Fabricは4つで構成される。
- ugo Nova: VLAなどのAIモデルによる全身制御に対応するロボット本体
- データ収集キット: バイラテラルコントローラー、VRコントローラー、データグローブ、ウェアラブルデバイスで人の操作や動作を学習データにする。映像、動作軌道、関節情報、力覚・触覚を取る
- ugo Data Factory: 対象業務に必要な実世界データの設計と収集を代行する。環境や対象物のばらつき、人の介入、失敗からの復旧といったデータを計画的に集めるとする
- ugo Model Lab: 既存のベースモデルを実世界データで追加学習し、タスク成功率、安定性、再現性で評価する開発支援

パートナーには、ABEJA、APTO、FastLabel、Forcesteed Robotics、Muso Action、Prox Industriesの6社が挙がった。このうちFastLabelとMuso Actionは、9月9日にGENIACのロボット基盤モデル公募で採択された13件にも名を連ねる。ugoは9月2日、FastLabelがugo Pro R&Dを使ってリアルデータとシミュレーションデータの混合学習を検証した成果を公開したと告知している。各社がFabricのどの層を担うのかは、リリースに書かれていない。
ugoが売ろうとしているのは、ロボットそのものより、ロボットを学習させる工程だ。データ収集を外部に任せる流れは国内でも広がっており、タイミーとジールスはスポットワークの働き手にデータ収集を担わせる。ugoはそこに自社の機体とモデル評価までを重ねた。
AIRoAのコンペを通れば、国のデータ収集ロボットになる
Novaには、もう1つの顔がある。AIロボット協会(AIRoA)がNEDOの委託事業の一環で進める「国産汎用ロボット開発コンペティション」への提案機体だ。AIRoAは2026年4月2日、このコンペの参加企業を採択した。Enactic、EmplifAI(マツダ、アイリア、アスラテック、TASKOとのコンソーシアム)、Keigan、THK、Telexistence、HatsuMuv、不二越、ugoが並ぶ。対象は双腕モバイルマニピュレーターで、約6か月で試作機を作る。
AIRoAは、各社の試作機を9月16日にパレスホテル東京の「フィジカルAI Summit」で公開すると予告していた。Novaの発表と同じ日だ。AIRoAの工程表では、試作機の評価基準を満たした企業だけが2026年9月〜2027年3月の改良期間に進み、さらに改良機の評価基準を満たした企業が2027年3月からの量産体制の構築に移る。量産機の納入とデータ収集用ロボットとしての活用は2027年7月以降に始まる予定で、選ばれた機体はNEDO委託事業のロボット基盤モデル開発でデータ収集に使われる。
ugoの「2027年に量産開始」は、この工程表と時期が重なる。ただし、AIRoAの評価を通ることが量産の前提なのか、通らなくても自社で量産するのかは、リリースに書かれていない。Fabricの概要図はNovaに「HW開発コンペ採択」と添えるが、4月の採択はコンペの参加者としての採択で、データ収集用ロボットとしての選定はこれからだ。同じコンペには、介護助手ロボット「Ena」を開発するEnacticも参加している。
GENIACとの関係にも公表されていない部分がある。9月9日の採択でugoは、自社のロボット製造ラインで約30万エピソードを集め、視覚・触覚・言語・動作を扱うVTLAモデルを開発する計画を示した。NEDOの概要は機体を「改造」すると記すだけで、機種名はなかった。Novaの製品ページには「触覚ハンド」の記述があるが、9月16日の2本のリリースも、GENIACで使う機体がNovaかどうかは明記していない。
「愛嬌」を守るため、センサーをヘッドセットに分けた
GK京都のデザインディレクター、小沼健太郎氏らに聞いたugo公開のインタビューで、GK京都側は、ugoから「愛嬌、かわいらしさ」の継承を求められたと話している。それは「人の警戒心を解き、人の近くに存在できるロボットにする」ことだという。印象を決める顔は、目と頭の形を現行機からなるべく変えなかった。プロジェクトの終盤に頭の上へセンサーを付けることになり、頭を大きくする案も検討したが、センサー部だけをヘッドセット型に独立させて顔の形を守ったという。
データ収集ロボットは、人の隣で人の作業をなぞり続ける。オペレーターが操る時間も、現場の作業員が横で働く時間も長い。頭上のセンサーを「ヘッドセット」として切り分けた判断は、人と並んで働く機械の見え方を設計の論点に置いたものだ。
公表されているのは、機体の仕様、4つのサービスの役割、パートナー6社、量産開始の年までだ。Nova本体の価格、Data FactoryとModel Labの料金と提供開始時期、成功率をどう測るかは、まだ示されていない。AIRoAの改良期間は2026年9月から2027年3月まで。どの機体がそこへ進むのかが、Novaの量産計画を読む次の手がかりになる。
出典
- フィジカルAI時代に向けた国産セミヒューマノイド「ugo Nova」を発表(ugo株式会社) — 2026-09-16
- ugo、データ収集からロボット基盤モデル開発までを一括提供するフィジカルAIプロダクト・サービス群「ugo Physical AI Fabric」を発表(ugo株式会社) — 2026-09-16
- ugo Nova 製品ページ(ugo株式会社)
- 親しみと先進性が同居する次世代機へ ugo Novaのデザインを手がけたGK京都に聞く(ugo株式会社) — 2026-09-16
- ugoとMelt Interface Technologiesが業務提携、ヒューマノイド向けデータ収集デバイスを共同開発(ugo株式会社) — 2026-09-09
- FastLabel、ugo Pro R&Dモデルを活用したロボット基盤モデル開発の研究成果を公開(ugo株式会社) — 2026-09-02
- AIロボット向け模倣学習キット:ugo Pro R&D(ugo株式会社)
- ugo、双腕セミヒューマノイド向けVTLAモデル開発が経済産業省・NEDOが推進する国家プロジェクトGENIACに採択(ugo株式会社) — 2026-09-09
- 国産汎用ロボット開発コンペティション参加企業の採択と試作機実演イベント開催のお知らせ(AIロボット協会) — 2026-04-02
- 国産汎用ロボット開発コンペティション試作機を9月16日に公開予定(AIロボット協会) — 2026-08-05
- 「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ロボティクス分野の生成AI基盤モデルの開発に向けたデータプラットフォームに係る開発(委託)」に係る実施体制の決定について(NEDO) — 2025-08-08