ものづくり

直径35mm、データセンターのファンと同じベアリングを積んだ投げコマ。NSKマイクロプレシジョンが世界最小をうたう

NSKマイクロプレシジョンとそろはむが、外径8.0mmの精密ベアリングを搭載した直径35mmの投げコマ「ビッグウィングpico」を発売する。既存モデルの約41%の直径で、ベアリングはデータセンターの冷却ファンモーターにも使われる同社製。価格は6,600円から。

NSKマイクロプレシジョン株式会社(神奈川県藤沢市、日本精工グループ)と株式会社そろはむが、精密ベアリングを搭載した投げコマ**「ビッグウィングpico」**を発売する。一般販売は2026年9月1日から。

ビッグウィングpico と搭載する外径8.0mmの精密ベアリング(日本精工株式会社)

数字

項目値
本体直径35mm
既存モデル「ビッグウィング」比直径約41%
搭載ベアリング外径8.0mm(ISC製精密ベアリング)
価格(モノメタル)6,600円(税込)
価格(バイメタル)7,700円(税込)
価格(バイメタル ブルー/レッド)各8,800円(税込)
一般販売開始2026年9月1日

先行販売は2026年8月27日〜30日、東京ビッグサイトの「TOKYOおもちゃショー2026」スピンギアブース(4-15)で行われる。

産業用ベアリングを玩具に載せる

この製品の中身は、産業用の精密部品をスキルトイに転用するという構図になっている。

搭載されるのは NSKマイクロプレシジョン(ISC)製のベアリングで、同社の説明によれば「データセンターの冷却ファンモーターなどにも使用されている」ものだ。データセンターのファンは、連続運転で低振動・低騒音・長寿命が求められる用途にあたる。そこで使われる水準の玉軸受を、外径8.0mmという小径で作れることが、直径35mmという本体寸法を成立させている。

製造は有限会社ミツミ製作所による国内生産。設計はそろはむが担当し、「単に小さいだけでなく、プロのパフォーマーでも扱いやすいサイズや形状を追求」したとされる。

ラインアップは材質で分かれる。バイメタルモデルは本体がアルミニウムで外周がステンレス(回転効率重視)、バイメタル色付きモデルは本体がアルミアルマイトで外周が真鍮、モノメタルモデルはステンレス製で落下の衝撃に強い。外周の材質で慣性モーメントを変えるという、コマの設計としては素直な作り分けになっている。

ベアリングと軸は消耗品で、軸は手で抜いて交換できる。ベアリング交換は技術を要するため返送修理の対応があり、交換部品も販売される。

「世界最小」の定義

同社は本製品を「世界最小」としているが、その定義がリリースに明記されている点は評価できる。

調査時期:2026年7月時点、調査対象:国内外で市販化されているベアリング搭載投げコマ(紐で回すコマ)。「最大直径」部分において世界最小であることを確認

つまり自社調査であり、比較対象は市販品に限られ、判定基準は最大直径という限定つきだ。第三者検証ではない。この種の主張で条件が書かれていないケースは多いので、書いてあること自体が判断材料になる。

なお、回転時間の数値は公式リリースに一切記載がない。公式の表現は「長時間回転する高い性能」「長時間のスピン性能」という定性的なものにとどまる。同社のハンドスピナー「サターンスピナー」について「12分以上回転」という数値が参考として挙がっているが、これは別製品の値だ。ネット上には秒数を挙げる記述が見られるものの、一次情報には存在しない。

重量、軸径、全高、ベアリングの型番・精度等級・玉数もいずれも非公表となっている。

部品メーカーが最終製品を出すということ

NSKマイクロプレシジョンは2025年に、世界最小のベアリング搭載けん玉「SG Kendama pico」を発売しており、今回はその第二弾にあたる。

軸受メーカーは通常、完成品メーカーに部品を供給する立場にある。自社の技術が最終製品のどこでどう効いているかは、外からは見えにくい。手に取って回せる製品を自社名で出すことは、技術の説明そのものになるという側面がある。

親会社の日本精工は同じ8月に、アトムと国産ヒューマノイドの共同開発でMOUを締結している。そちらはアクチュエータという、ヒューマノイドの関節に入る部品の話だ。産業用の軸受技術が、片方ではヒューマノイドの関節へ、もう片方では6,600円のコマへ向かっている。技術の応用先としてはずいぶん離れているが、小径で低摩擦の玉軸受を作るという中心は同じところにある。


出典