レスコン2026、最高賞は「やさしい救助」を掲げた近畿大学福岡。ダミヤン3体を静かに確実に運んだ
レスキューロボットコンテスト2026の本選が2026年8月8日・9日、神戸市のしあわせの村で開かれた。最高賞のレスキュー工学大賞は、近畿大学福岡のチーム「レスキューHOT君」。選考理由には「やさしさ」と「迅速性」という一見相反する要素を両立した点が挙げられている。
レスキューロボットコンテスト2026(レスコン2026)の本選が、2026年8月8日・9日に神戸市北区のしあわせの村 体育館で開かれた。主催はレスキューロボットコンテスト実行委員会と神戸市、特別共催に総務省消防庁が入る。

本選出場は12チーム。来場者は8日が1,287人、9日が1,620人で、オンライン配信の視聴回数はそれぞれ1,139回と1,352回だった。
競技のルールが決めていること
レスコンの競技は、1/4スケールで作られた被災建物の模型が舞台になる。参加チームは自作のロボットを遠隔操縦し、要救助者に見立てたダミー人形「ダミヤン」を救助する。
ここで効いているのがルールの設計だ。公式の説明によれば、ロボットを目視で確認することはできない。操縦者は壁を隔てたエリアで、ロボットに搭載されたカメラの映像だけを見ながら操作する。そして評価されるのは速さと正確さだけではなく、**要救助者への「やさしさ」**と、そのための独創的なアイデアも含まれる。
つまりこの競技は、「速く運べば勝ち」にならないように作られている。ダミヤンに衝撃や振動を与えれば減点され、丁寧すぎて時間切れになれば点が伸びない。相反する2つの評価軸を同時に満たすことが要求される構造になっている。
最高賞は「やさしい救助」
レスキュー工学大賞を受賞したのは、近畿大学福岡 ロボット工作研究会のチーム「レスキューHOT君」。ベストパフォーマンス賞とベストチームワーク賞も同チームが取っている。
選考理由には、この競技の性格がそのまま出ている。
「『やさしい救助』という明確なコンセプトを、確かな技術力と実行力によって具現化した点を高く評価した」 「『やさしさ』と『迅速性』という、一見相反する要素を両立し、ファイナルステージではダミヤン3体を確実に救助した。静かで丁寧、かつ穏やかな動作によって要救助者への負担や不安を抑えながら、無駄のない動きで迅速な救助を実現しており、『やさしく、確実に、そして迅速に救う』という救助ロボットのあるべき姿を示した」
ファーストステージの速報値では同チームが406ポイントで、2位のMCT(松江高専)の274ポイントを大きく引き離している。
消防庁長官賞は「受け渡し」の設計に
消防庁長官賞を受賞したのは松江高専のMCT。選考理由は具体的で、実装の話として読める。
「2階の要救助者(ダミヤン)救出後の搬送に際して、救助ロボットと搬送ロボットとの連携した3次元的な受け渡しにより、階段における振動や衝撃、頭部の向きに対する不安や苦痛を回避した救助手法を高く評価した。また、球状歯車を用いたコンパクトかつ高い自由度を有する機構によりダミヤンを抱えるグリッパ部の向きや把持力の制御を可能とすることで、ロバストかつ安定把持を実現した」
1台で全部やるのではなく、救助ロボットと搬送ロボットで役割を分け、その受け渡しを3次元的に設計する。階段という段差のある経路で、頭部の向きまで考慮する。実際の災害現場で問われるのはまさにこの部分で、学生コンテストの評価軸がそこに向いていることが分かる。
ベストロボット賞(日本ロボット学会特別賞)は大阪工業大学 梅田プログラミングロボットプロジェクトの2号機「ピーター・パーカー」、ベストテレオペレーション賞は大阪工業大学 ロボットプロジェクトの「大工大エンジュニア」が受賞した。
賞に埋め込まれた記憶
レスコンには竸基弘賞という賞がある。公式の説明によれば、1995年1月17日の阪神淡路大震災で倒壊したアパートの下敷きになり、23歳で亡くなった当時神戸大学大学院博士前期課程1年の竸基弘氏にちなむもので、レスキューシステムの研究開発に貢献した40歳未満の若手研究者を表彰する。2026年の奨励賞は東京都立産業技術高専 荒川キャンパスの「HolyLab」が受賞した。
神戸で開催され、消防庁が特別共催に入り、震災で亡くなった学生の名を冠した賞がある。この構成自体が、競技の評価軸が「やさしさ」に向いている理由を説明している。
次回のレスコン2027は2027年8月7日・8日に神戸市内で開催予定とされている。会場の詳細は未定。
日本のロボティクス教育で、災害救助を題材にした学生コンテストが四半世紀近く続いていることの意味は、優勝チームの技術より、評価軸を誰がどう決めてきたかにある。速さだけを競わせないという設計判断が、そこで育つ技術者の関心をどこに向けるかを決めている。