UBTECH、上半期にフルサイズ機921台を出荷。公表されている成功率75%は実験室環境での値
UBTECHは2026年上半期にフルサイズ・ヒューマノイドを921台販売し、収入は前年同期比1,445.0%増のRMB590.3百万に達した。同じ中間業績公告に載る作業成功率は「実験室環境で75%」。稼働率・MTBF・人の介入率を公表するメーカーはなく、測り方を定めた国家標準もまだ発行されていない。
UBTECH(優必選、9880.HK) が2026年8月28日に香港交易所へ提出した中間業績公告に、フルサイズ・ヒューマノイドの販売台数が載った。2026年上半期で 921台(前年同期比1,946.7%増)、収入は RMB590.3百万(同1,445.0%増)。同じ書類の技術セクションには、もう一つ数字がある。荷積み・荷降ろし工程の作業成功率が 「実験室環境で75%」 に達した、という記述だ。
この二つの数字の距離が、中国のヒューマノイド商用化の現在地を表している。

台数は開示に載った。ただし全部が工場向けではない
| 期間 | フルサイズ機収入 | 販売台数 | 1台あたり |
|---|---|---|---|
| 2025年通年 | RMB820.6百万 | 1,079台 | 約76万元 |
| 2026年上半期 | RMB590.3百万 | 921台 | 約64万元 |
2025年の実績は2025年度年次報告書に載っており、同社の公式発表はこの台数を「主に産業シーンへ投入され、販売の80%超を占めた」と補足する。全社の粗利率は44.7%まで伸びたが、期間損失は RMB338.8百万で、Agility Robotics と同じく黒字化していない。
ただし921台は「あらゆるシーン向け」の合計で、展示案内や商業接待に使う Walker C1、伴侶用途の U1 シリーズも含まれる。工場に入った台数ではない。加えて2026年上半期は単一の顧客が RMB308.5百万=全社収入の24%を占めた。2025年上半期に10%を超える顧客はいない。1台あたりの金額も「製品およびサービス」収入を台数で割った値だが、Unitree の2025年平均単価16.64万元の約3.8倍にあたる。
「24/7連続作業」の根拠は3分の電池交換
Walker S2 の公式製品ページが掲げるのは「3分以内に自律的にバッテリーを交換する」「24/7連続作業」「15キログラムを搬送する」の三点で、身長・体重・電池容量は載っていない。稼働率も MTBF(平均故障間隔)も作業成功率もない。
「何時間動けるか」の数字自体は各社よく揃っている。Galbot(銀河通用)G1 は公式スペックで「工作時長8時間」、Unitree G1 は「約2時間」、H2 と Fourier GR-3 は「約3時間」。ただしその時間に何をどれだけの負荷でやるのかは、どれにも併記されていない。2時間立っているのと2時間作業するのは別の量だ。電池を大きくするか交換するかで解けるのは動ける時間だけである。
公表された成功率は「実験室で75%」と「6日間で99.99%」
中間業績公告の該当箇所はこう書く。手首搭載の視覚センシングを導入し、ピックアップ・荷積み・荷降ろし・配置というタスク列に対して、データ収集からモデル学習、実機展開までのパイプラインを最適化した。そのうえで「現時点で、実験室環境における成功率は75%に達し、統制された環境から動的な産業シーンへ移行する VLA 技術の汎化能力を予備的に検証した」。会社自身が「予備的な検証」と位置づける、実験室の数字である。
AgiBot(智元機器人)の公表値も条件付きだ。累計1万5,000台の生産到達を伝える公式記事(出荷ではなくライン下ろしの台数)は、龍旗科技の工場に精霊G2を8台入れ、6日間で17,500点あまりの検査工程をこなして「作業成功率99.99%」に達したとする。8台・6日間の数字である。
そして次の指標は、確認できた範囲でどのメーカーも公表していない。
- 稼働率(負荷時間に対して実際に動いた時間の割合)
- MTBF / MTTR(平均故障間隔と平均修復時間)
- 人の介入率/テイクオーバー率
- 実ラインでの作業成功率
これは中国勢が不誠実だという話ではない。Unitree の招股説明書のリスク開示は、むしろ状況を正確に書いている。「製品の航続、演算速度および耐久性は大規模な検証を経ていない」。産業シーンでの展開についても「現時点で当該シーンは全体として探索・検証の段階にある」と記す。
パイロットと呼んでいるのは、メーカー自身であり、政府である
UBTECH が香港交易所へ出したヒューマノイドの受注公告は、確認できる限り2025年4月27日の1件だけだ。タイトルには「産業製造シーンの調達契約を**小ロットで(in small batch)**初めて獲得」とあり、本文は自動車工場での「予備的な実訓(preliminary practical training)で実質的な進展があった」とする。相手方は「a purchaser」とだけ書かれ、台数も契約金額も購入者名も開示されていない。対象は Walker S1 と Walker C で、用途は「製造ニーズおよび商用接待」だ。
年次報告書は、年産能力6,000台超をもって「具身知能ヒューマノイドが実地試験(field trial)から商用応用へ正式に移行した」と書いた。ただし同じ報告書のESG事例で Zeekr(極氪)の5Gスマート工場について記されているのは「複数ロボットの協調訓練」であり、台数も期間もない。欧州でも、Terra Robotics が「数十台を初回ロットとして購入した」うえで ROSSMANN の物流拠点へ入れるこの発表自体が「長期・大規模のパイロットプログラムを通じて」と書き、日立との協業も「実地の運用テストと適用シーンの検証」段階とされる。
政策側の枠組みも同じ位置にある。工業情報化部と国務院国資委が2026年6月3日付で出した通知(工信厅联科函〔2026〕256号)は、名称からして「2026年度人形机器人与具身智能实景实训専項行動」——実景での実訓、である。目標は「2026年末までに、代表的なシーンで応用検証と常態配備を先行して完了し『作業モード』を開始する」。評価では「整機ソリューションの真実作業成功率、効率向上率、安全信頼性および経済的実行可能性などの主要指標を科学的に評価し、応用検証報告書を出す」としつつ、達成条件は各利用企業または第三者機関に委ねられ、全国共通の数値基準は示されていない。
買った側の開示はさらに静かだ。BYD の2026年中間報告書が具身知能の布石として挙げるのは帕西尼(PaXini)と智元機器人への出資で、UBTECH も Walker も一度も出てこない。一方 UBTECH の関連当事者注記によれば、2025年の BYD グループ向け売上は RMB20,898千、2025年12月31日時点の売掛金残高もまったく同じ RMB20,898千。その年の売上が全額、未回収のまま年を越している。 導入側が公式に語った数少ない例が Foxconn(鴻海)で、2026年5月14日の第1四半期業績発表は「ヒューマノイドと協働ロボットは第2四半期に米国の製造拠点へすでに導入された。稼働データを収集し、その後のモデル最適化と大規模展開に役立てる」とする。
物差しは未発行。ただし日本の現場には語彙がある
指標が出てこないのは、各社の姿勢だけの問題ではない。測り方を定めた規格そのものが、まだ発行されていない。
中国では全国機器人標準化技術委員会 人形機器人分技術委員会(SAC/TC 591/SC 5)が置かれ、国家標準の計画は52件にのぼる。だが2026年9月時点でそのすべてが「正在審批」——起草39件、意見募集7件、承認待ち6件——であり、発行済みはゼロだ。《人形机器人可靠性试验方法》(信頼性試験方法)も第1〜3部が2026年5月22日に起草入りしたばかりで、第2部・第3部の対象は直動関節と回転関節、つまり部品であって機体の稼働率ではない。国際標準も、脚のあるロボットの移動性能を扱う ISO 18646-5:2026 が2026年7月に発行されたが、規格自身が「安全要求の検証・妥当性確認を意図したものではない」と明記する単体性能の試験方法だ。半導体装置に1986年初版の SEMI E10 が装置の6状態と稼働率・RAM の測り方を定めているのとは対照的である。
一方、日本の製造業は「動いた時間」と「価値を生んだ時間」を分ける語彙を50年以上前から持っている。公益社団法人日本プラントメンテナンス協会(JIPM)が TPM優秀賞の受審要領で定義しているのは、次の指標だ。
- 設備総合効率[%] = 時間稼動率 × 性能稼動率 × 良品率
- 時間稼動率[%] = (負荷時間 − 停止時間) / 負荷時間 × 100
- MTBF[時間] = (負荷時間 − 故障停止時間) / 故障件数
- MTTR[時間] = 故障停止時間 / 故障件数
「8時間動く」は時間稼動率の話で、「8時間役に立つ」は設備総合効率の話にあたる。TPM賞の効果指標シートには MTBF と MTTR の記入欄が最初から用意されている。国際規格の発行を待たなくても、既存設備と同じ表に載せることはできる。
国内メーカーが導入を検討するときに聞くべきことも、そこから決まる。対象工程での実ラインの作業成功率(実験室値ではなく)、時間稼動率と、その分母である負荷時間の定義、故障件数・MTBF・MTTR、人が介入した回数と1回あたりの復旧時間、バッテリー交換中にラインが止まるのか。既存設備には当たり前に付いている数字で、ロボットにだけ免除する理由はない。日立が Walker S2 で進めているのも、XPeng が量産機をまず自社店舗へ入れるのも、要するにその検証にあたる。台数は法定開示に載り始めたが、稼働データはまだ外に出ていない。
出典
- 2026年中期業績公告(UBTECH ROBOTICS CORP LTD、香港交易所) — 2026-08-28
- 2025年度年次報告書(UBTECH ROBOTICS CORP LTD、香港交易所) — 2026-04-14
- VOLUNTARY ANNOUNCEMENT — THE COMPANY’S FIRST OBTAINING OF PROCUREMENT CONTRACT FOR EMBODIED INTELLIGENT HUMANOID ROBOTS FOR INDUSTRIAL MANUFACTURING SCENARIOS IN SMALL BATCH(UBTECH、香港交易所) — 2025-04-27
- UBTECH and Hitachi Enter into Strategic Partnership to Jointly Explore Intelligent Solutions Across Multiple Fields(UBTECH 公式) — 2026-07-13
- UBTECH partners with collaborators to accelerate global expansion, Bringing humanoid robots to European retail logistics environments(UBTECH 公式) — 2026-07-13
- Walker S2 製品ページ(UBTECH 公式)
- 2026年中期報告書(比亜迪股份有限公司、香港交易所) — 2026-08-28
- Hon Hai Technology Group (Foxconn) Announces First Quarter 2026 Financial Results(鴻海科技集団 公式) — 2026-05-14
- 不到3个月再破里程碑!智元第15000台具身机器人下线,创下全球量产新纪录(智元機器人 公式) — 2026-06-29
- Galbot G1 製品ページ(銀河通用 公式)
- Unitree G1 製品ページ(Unitree 公式)
- Unitree H2 製品ページ(Unitree 公式)
- GR-3 General Information(Fourier 公式ドキュメント)
- 宇树科技 招股説明書(cninfo) — 2026-08-14
- 工业和信息化部办公厅 国务院国资委办公厅关于联合开展2026年度人形机器人与具身智能实景实训专项行动的通知(工信厅联科函〔2026〕256号) — 2026-06-08
- 全国机器人标准化技术委员会人形机器人分技术委员会 SAC/TC 591/SC 5(国家标准化管理委员会)
- ISO 18646-5:2026 Robotics — Performance criteria and related test methods for service robots — Part 5: Locomotion for legged robots(ISO) — 2026-07
- SEMI E10 — Specification for Definition and Measurement of Equipment Reliability, Availability, and Maintainability (RAM) and Utilization(SEMI)
- 2021年度 TPM優秀賞 ②受審要領(公益社団法人日本プラントメンテナンス協会) — 2020-12-22