研究と社会

KinectとFace IDを作った3人が興したLyte、シリーズCで1億6500万ドル。評価額は16億ドルに

米Lyteが2026年9月2日、シリーズCで1億6500万ドルを調達。ポストマネー評価額16億ドル、リードはMaverick Silicon。累計は2億7200万ドル。ただし検出距離も分解能も顧客名も非公表のままだ。

ロボット向けの知覚システムを開発する米 Lyte が2026年9月2日、シリーズ C で 1億6500万ドルを調達したと発表した。ポストマネー評価額は 16億ドル、リードは Maverick Silicon。2021年の創業以来の累計調達額は 2億7200万ドルになる(Lyte 公式発表)。同社がステルスを出たのは2026年1月5日で、そこから8か月での増資である。

Fidelity と Exor 系が継続、Maverick Silicon が取締役会へ

公式発表では、シリーズ B をリードした Fidelity Management & Research Company、Atreides Management、Key1 Capital、Ora Global(旧 Exor Ventures)などが参加し、Maverick Silicon から Andrew Homan が取締役会に加わる。1月5日のステルス脱却時の累計は1億700万ドルで、会長 Avigdor Willenz のグループも出資していた。創業者は Alexander Shpunt(CEO)ら Apple / PrimeSense 出身の3人。Shpunt が2005年に創業した PrimeSense の「Light Coding」が Kinect(2010年)と Face ID(2017年)に載った系譜にあたる。

「LiDAR」とも「FMCW」とも名乗らない

製品は LyteVision。4Dコヒーレントビジョン、RGB 撮像、慣性計測(IMU)を自社設計のシリコン上で単一タイムラインに同期し、1本の接続で出す。位置と運動をネイティブに測るのでソフトウェアで後から復元しない、というのが主張だ。コヒーレントビジョンは「パターンを投影して歪みを読むのではなく、連続的な信号を送って戻りを測る」方式で位置と速度を同時に取る、と同社は書いている。FMCW(周波数変調連続波)方式の説明に対応するが、Lyte 自身は公開ページで LiDAR とも FMCW とも名乗っていない。

押さえるべきは、検出距離・角度分解能・点群レート・消費電力・価格が、公式サイトにも発表資料にも一つも出ていないことだ。出荷先も「検査・物流・製造分野の主要なロボティクス顧客」とあるだけで、社名も台数もない。公開された外形的な実績は、CES 2026 でのロボティクス部門 Best of Innovation 受賞、3月の GTC で NVIDIA と発表した「Perception-to-Twin」構成、6月の NVIDIA Halos for Robotics 参加にとどまる。

SPAC 上場した LiDAR 勢が退場した後の局面

この調達は、LiDAR 業界の淘汰が一巡した後に来ている。Quanergy は時価総額基準の未達で2022年11月に NYSE の売買を停止され、12月13日にデラウェア連邦破産裁判所へ Chapter 11 を申請した(事件番号22-11305)。Velodyne は2023年2月10日に Ouster と対等合併し(1株が Ouster 株0.8204株に交換)、社名は Ouster に一本化された。Cepton は2025年1月7日に小糸製作所による買収が完了し、1株3.17ドルの現金対価で Nasdaq を退場した。Luminar は2025年12月15日に Chapter 11 を申請し、SEC への 8-K によれば清算計画が2026年4月6日に発効、普通株は無償で消却され株主への配分はゼロになった。

SPAC 上場組が破綻・合併・被買収に収れんした後で、非上場のセンシング企業に1億6500万ドルが入る。買い手が自動車 OEM からロボティクスへ移り、売り物が「センサー単体」から「知覚プラットフォーム」へ変わった、というのが前の局面との差になる。

触覚は現場を借り、視覚はシリコンから作る

センシングへの資金流入は視覚側だけではない。触覚センサーでは、BYD が自社の自動車工場を PaXini の実地検証とデータ収集の場として開放する提携が2026年8月に成立している。ただし性格は対照的だ。触覚側は現場と稼働データを事業会社から引き出す提携が中心で、金額は非公表。視覚側は資本だけが公表され、技術数値が出ない。

日本勢はチップと灯具から入る

日本勢は別のレイヤーから入っている。ソニーセミコンダクタソリューションズは2025年6月10日、車載 LiDAR 向けの積層型 SPAD 測距センサー IMX479 を発表した。有効画素105×1,568、垂直角度分解能0.05度相当、最大300mまで最小5cm刻み、940nm での光子検出効率37%、サンプル価格は税込3万5000円。売り物はデバイス単体だ。小糸製作所は Cepton の買収で灯具メーカーとして LiDAR を製品群に取り込み、短・中・長距離を低消費電力・小型で作り、車載以外に産業・建設機械や施設インフラへも広げるとしている。

チップを売るソニー、灯具に組み込む小糸、プラットフォームごと売る Lyte。同じ「ロボットの目」でも、どのレイヤーで対価を取るかの設計は割れている。


出典