産業と実装

深圳の医療用外骨格Milebot、1億元弱を調達。中国では第二類として省の審査を通っている

2026年8月31日、深圳の医療用外骨格メーカー Milebot(迈步机器人)が中信建投資本から「近1億元」のB輪戦略投資を受けたと発表。2025年業績は前年比約200%増としている。一方で承認は中国のⅡ類止まりで、自社の多施設RCTは従来訓練を上回らなかったと結論している。

深圳の医療用外骨格メーカー Milebot(迈步机器人 / 深圳市迈步机器人科技有限公司) が2026年8月31日、中信建投資本から「近1億元」のB輪戦略投資を受けたと自社サイトで発表した。2025年の業績は前年比約200%増としている。伝えられている「海外売上比率が3割を超えた」「黒字化した」という数字は、この公式発表には書かれていない。

公式発表にあるのは「近1億元」と200%成長だけ

使途は3つ挙がっている。脳制御外骨格(ブレイン・マシン・インターフェースとの融合)、院内リハビリ・地域介護・家庭利用をつなぐ製品群、そして海外市場——販売チャネル、現地オペレーション、「合規認証体系」つまり各国の薬事認証の整備である。

会社は2016年9月設立、創業者は陳功氏。公式の沿革は柔軟駆動器(コンプライアント・アクチュエータ)と生物力学的な歩容解析モデルを核心技術に挙げる。資本は2017年の聯想創投によるエンジェルラウンドに始まり、2022年には威高集団が戦略投資している。今回はジョンソン・エンド・ジョンソン出身の陳康寧氏を新CEOに迎えたことも併記された。売上の実額は今回も公表されていない。

院内・地域・家庭の3層。CE認証を取ったのは医療機器ではない方

中核のH系列(BEAR-H1/H2、EXO-H1/H3/H4)は脳卒中後の歩行訓練用で、股・膝・足の両側6関節を駆動する。適用身長155〜190cm。25個のセンサーと生物力学モデルで足底圧と歩容を読み、矯正力と歩速を調整するという。BEAR-A系列は股・膝を助力し、BCI・EMG・FESを外付けできる。同社が効能として挙げるのは「医師が患者の脚を持ち上げる必要がなく、短時間でより多くの歩数を歩ける」——療法士の負担軽減と訓練量の確保である。

Milebot の「三千步」下肢外骨格。歩行器フレームに駆動関節を組み込み、車輪で移動しながら歩行訓練を行う(Milebot 公式サイト)

ほかに小児用のC系列、歩行器フレームに駆動部を載せた「三千步」、股関節だけを助ける装着型のMAX系列がある。2026年3月には消費者向けのK系列を投入し、7月24日にCE認証の取得を発表した。ただし発表文自身が「医療リハビリ類の外骨格製品とは異なり生活・アウトドア用途」と書く通り、EU医療機器規則(MDR)に基づく医療機器としての適合とは別物だ。価格と導入施設数は、どの製品も公表されていない。

自社の多施設RCTは「従来の訓練より優れてはいない」と書いている

同社が公開する臨床論文の中心は BEAR-H1 を使った多施設ランダム化比較試験で、発症6か月以内の脳卒中患者130人を1回30分・1日2回・週5日で4週間訓練した。両群とも6分間歩行試験・FMA下肢サブスケール・FAC・ケイデンスが有意に改善したが、群間に有意差はなかった。結論は「歩行機能を改善しうるが、その効果は従来の歩行訓練より優れてはいなかった」(登録番号 ChiCTR2100044475)。公表エビデンスは「療法士の代わりに歩数を稼ぐ装置」としては筋が通るが、歩行能力そのものの上乗せは示していない。

FDAの動力外骨格25件に中国企業はいない。米国は1台9万1,032ドルを払う

米国では動力外骨格は21 CFR 890.3480、製品コード PHL のクラスII機器である。2014年6月の ReWalk の De Novo(DEN130034)で経路ができ、FDAのデータベース上、このコードの認可は2026年9月時点で25件。ReWalk/Lifeward、Ekso Bionics、Parker Hannifin、CYBERDYNE、ホンダ、サムスン電子、Wandercraft——中国企業は1社もない。直近は2026年8月3日にクリアランスを得た Wandercraft の「Eve」だ。

償還も付いている。CMS は2024年1月1日から個人用外骨格をメディケアの装具(brace)給付区分に置き、同年4月11日の DMEPOS 料金表で HCPCS コード K1007 に一括購入額 91,032ドル を設定した。一方 Milebot の主力はⅡ類止まりである。中国の医療器械監督管理条例(国令第739号)は、第二類(中度リスク)を省・自治区・直轄市の薬監部門が、第三類(較高リスク)を国務院薬品監督管理部門=NMPA本体が審査すると定める。同社は2018年に広東省の第二類創新医療器械特別審批を経て、2021年12月にⅡ類登録を得た。承認が取れた市場と取れていない市場を分けて売るのは、メドトロニックによる香港 Cornerstone Robotics への7億ドル出資でも見た構図だ。

日本で保険が付く外骨格はHALだけ。上場勢は縮んでいる

股関節を助ける装着型の助行ロボット。日常生活での歩行支援を想定する(Milebot 公式サイト)

日本で公的医療保険が使える外骨格は、CYBERDYNE の医療用HAL下肢タイプだけである。同社の製品ページによれば対象は緩徐進行性の神経・筋難病8疾患——脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、シャルコー・マリー・トゥース病、遠位型ミオパチー、封入体筋炎、先天性ミオパチー、筋ジストロフィー——に、HTLV-1関連脊髄症と遺伝性痙性対麻痺を加えたもの。診療報酬は J118-4 歩行運動処置(ロボットスーツによるもの)1日につき1,100点。患者数の多い脳卒中と脊髄損傷は保険の外にあり、脊髄損傷は当局と適応拡大を協議中だと2026年3月期決算短信にある。米国FDAでは脊髄損傷・脳卒中・脳性麻痺まで対象なのだから、差は技術ではなく制度の側にある。同期の売上収益は38億4,600万円(12.3%減)、営業損失6億100万円。医療用HAL下肢タイプは2026年3月末で国内外558台(うち国内レンタル契約120台)が稼働している。

上場勢は縮んでいる。Ekso Bionics Holdings の2025年12月期 Form 10-K は売上1,279万9,000ドル(29%減)で、継続企業の前提に重要な疑義があると記した。同社は Applied Digital のクラウド事業との統合を2026年5月5日付で完了し、社名は ChronoScale、Nasdaq のティッカーは CHRN に変わっている。Lifeward(旧 ReWalk Robotics)も2025年12月期は売上2,203万4,000ドルで、継続企業の疑義をリスク要因の筆頭に挙げる。9万ドルの値札が付いても、損益はまだ黒くない。

厚生労働省の推計では、介護職員は2022年度の215万人に対し2026年度に約240万人、2040年度に約272万人が必要になる。外骨格が解けるのは、1回30分の訓練で確保できる歩数と、移乗・歩行介助にかかる身体負荷の一部である。解けないのは、訓練の中身を決める判断と、保険が付かない機器の購入原資だ。Milebot の3つの使途に「海外市場の合規認証体系」が入っているのは順序として正しい。中国のⅡ類登録は、中国の外では効力を持たない。


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