産業と実装

Robot.com(旧Kiwibot)とSodexoが7年契約。Starshipが引き揚げた大学キャンパスへ歩道配送を広げる

Robot.comが2026年8月20日、給食大手Sodexoと7年の商用契約を締結。北米のSodexo運営キャンパスで歩道配送を拡大し、ロボット搭載広告にも広げる。同じ2026年6月、Starshipは米大学から1,200台を引き揚げていた。

歩道配送ロボットの Robot.com(米サンフランシスコ)が2026年8月20日、食堂・給食運営大手 Sodexo と 7年の商用契約を発表した。北米の Sodexo 運営大学キャンパスで自律配送を拡大し、加えてロボットに広告面を載せる「R-ads」へ範囲を広げる。Robot.com は自社最大の単一エンタープライズ展開だとしている。ただしキャンパス数・台数・金額はいずれも非公表である。

Sodexo運営キャンパスでの自律配送(Robot.com)

契約は7年、開示は「5年の取引実績」だけ

公表されたのは契約期間7年、提携開始が2021年で今回が5年目、対象が北米 Sodexo 運営キャンパスの一部、新規範囲がロボット広告——ここまでだ。Sodexo 側からの独立した発表は確認できない。Robot.com の Chief Business Officer、J. Kim Fennell 氏は「この5年で展開モデルと経済モデルの両方について多くを学んだ」とする。

Sodexo は2022年2月15日の発表で、当時10キャンパス200台だった Kiwibot を2022年末までに50キャンパス1,200台へ拡大するとし、累計20万件超の配送実績を挙げていた。Sodexo は同社の出資者でもある。今回はその継続契約を長期化し、広告を足したものと読める。

「Kiwibot」から「Robot.com」へ

社名変更と統合が続く業界なので素性を整理しておく。Robot.com は2017年創業の Kiwibot が前身で、2025年5月8日に robot.com ドメインを取得して改称した。2026年8月時点で500台超・累計250万タスク超、稼働は米国・カナダ・ドバイ・MENA。Starship Technologies(エストニア発)、Serve Robotics(Postmates 発)とは資本・沿革ともに別会社である。主力は歩道配送の R-kiwi(Level 4 自律、12時間バッテリー、積載19L)で、四足歩行の R-Dog の商用展開は2027年の予定。

CEO の Felipe Chavez Cortes 氏は2026年上半期に「収益を生む稼働時間で25万時間」を達成し年間100万時間を目指すとするが、1台あたりの配送件数と、遠隔監視オペレーター1人あたりの担当台数は公表されていない。

Starship は同じ年にキャンパスから引き揚げた

対照的な動きが同年に起きている。Starship Technologies は6月4日、米大学キャンパス事業を縮小してグロサリー配送に集中すると発表し、1,200台超を2026–2027年度の新学期までに再配置するとした。理由は経済性で、ロボット配送は人手より1件あたり3〜4ドル安いとする。撤退側がユニットエコノミクスを開示し、拡大側が開示していない構図になっている。

キャンパスが選ばれてきた条件自体は明確だ。敷地の多くが私有地で歩道走行規制が直接かからず、走行距離が短く、需要が食堂・寮・図書館に密集し、深夜帯の注文が読める。加えて Sodexo のような事業者が複数校を一括運営するため、営業1件が数十キャンパスに届く。

州法は歩道ロボットを「歩行者」と書いた

米国では歩道配送ロボットを Personal Delivery Device(PDD)と呼び、州法で歩行者扱いにする規定が積み上がっている。バージニア州(2017年制定・2020年改正)は歩道・横断歩道上で「同じ状況の歩行者と同一の権利と責任」を認め、歩道での速度10mph以下と10万ドル以上の一般賠償責任保険を課す。ペンシルベニア州(Act 106)は積載を除く自重550ポンド(約249kg)以下、歩行者エリアで12mph以下とし、運行前に PennDOT の認可(1年更新)を求める。速度と保険で担保する設計だが、州法があっても自治体が禁止・制限する例はある(MassRobotics の調査では移動ロボット規制の賛否が43%対43%)。

日本は6km/h・届出制で、1人10台まで来た

日本は2023年4月1日施行の改正道路交通法(令和4年法律第32号)で「遠隔操作型小型車」を新設した。警察庁の資料によれば、通行場所を管轄する都道府県公安委員会へ通行開始の1週間前までに届け出る制度で、車体は長さ120cm・幅70cm・高さ120cm以下、性能上の最高速度は6km/h以下。赤色の押しボタン式非常停止装置と、車体への標識・届出番号の表示も義務づけられる。パナソニックホールディングスは2023年7月31日に藤沢、8月1日に丸の内で届出制に基づく運用を開始し(同社は「日本初」とする)、2025年1月23日には1人で10台を同時に遠隔運用する道路使用許可を取得した(藤沢5台・門真2台・佐賀3台。2022年時点の上限は4台)。楽天グループは2024年11月6日に「楽天無人配送」を東京都晴海周辺で開始、Cartken 製の機体を最高速度5.4km/h、配送料100円で運用している。

米国が249kg・19km/h まで許して保険で受けるのに対し、日本は寸法と6km/h で先に絞る。Gatik が「契約済み売上」を先に示してから台数を増やしたように、この分野は台数ではなく稼働時間と1件あたりコストで語られ始めている。Robot.com がその数字を出すかどうかが、7年契約の実体を測る材料になる。


出典