産業と実装

ロボット倉庫が出した部品を、ヒューマノイドが次工程へ渡す。矢崎総業・山善・Cuebusが裾野で実証

矢崎総業・山善・Cuebusが、矢崎総業の裾野市の拠点「Innovation Hub – REN(錬)」で、ロボット倉庫「CUEBUS」から出庫した部品をヒューマノイドが受け取り次工程へ渡す実証を2026年9月21日に始める。公表されているのは工程と検証項目までで、機種・台数・終了時期・数値目標は未公表。

人が歩く通路をなくして保管密度を上げる倉庫と、人が働く空間にそのまま入れることを利点に掲げるヒューマノイド。発想の向きが逆の2つを1本の工程でつなぐ実証が、静岡県裾野市で始まる。

矢崎総業、山善、Cuebus の3社は2026年9月10日、矢崎総業のイノベーション施設「Innovation Hub – REN(錬)」にリニアモータ式ロボット倉庫「CUEBUS(キューバス)」を設置し、施設内のヒューマノイドロボットと連携させる実証を9月21日から始めると発表した。同じ内容のリリースを山善と矢崎総業もそれぞれ自社サイトに載せている。

Innovation Hub – REN(錬)の外観と、CUEBUSの立体フレームの横でケースに手を伸ばすヒューマノイドロボット(Cuebus 公式リリースより)

検証するのは、倉庫の出庫口からヒューマノイドへの受け渡し

3社のリリースが示す工程はこうだ。CUEBUS が部品・資材を自動で出庫し、ヒューマノイドがそれを受け取って次工程へ引き渡す。検証項目は「工程間連携」「動線効率」「在庫管理の最適化効果」の3つで、狙いとしてリードタイム短縮と作業負荷の軽減を掲げる。施設に入っている「フィジカルAIデータ」との連携も検証の対象に含めている。

項目3社リリースの記載
場所Innovation Hub – REN(錬)(静岡県裾野市)
開始日2026年9月21日
終了時期記載なし
倉庫CUEBUS(モデル・規模の記載なし)
ヒューマノイド「山善とのパートナーシップのもと同施設に導入されている自律型ヒューマノイドロボット」(機種・台数の記載なし)
検証項目工程間連携、動線効率、在庫管理の最適化効果、フィジカルAIデータとの連携
数値目標記載なし

各社の役割を明示した一文はない。文面からは、矢崎総業が施設と課題設定、Cuebus が倉庫システム、山善がヒューマノイド導入のパートナー、という分担が読み取れる。人手や既存の搬送設備との比較方法、実証後に本導入へ進む条件も書かれていない。公表されているのはここまでだ。

RENのヒューマノイドは「自ら考え、学習する」機体と説明されている

REN は矢崎総業の研究開発・管理拠点 Y-CITY の中にあり、2026年7月15日に本格始動した。所在地は裾野市御宿1500、敷地面積12,547m²、延床面積3,682m²。ワイヤーハーネスを主力とする矢崎総業は、人の手に依存する工程が多い分野へAI・ロボティクスを入れ、「ロボットで人を置き換えるのではなく、人とロボットがそれぞれの強みを活かしながら協働する」工場を目指すとしている。

7月のリリースは施設の特徴の筆頭にヒューマノイドの導入を置き、「従来のように人の指示に従って動作するロボットとは異なり、自ら考え、学習しながら人の動きを再現する自律性を備えています」と書く。「国内初と見込まれる体制を構築します」ともあるが、体制の中身や機種名、メーカー、台数には触れていない。

今回のリリース写真に写るロボットは、車輪付きの台座に頭部と両腕を載せた形で、CUEBUS のフレームに収まったケースへ手を伸ばしている。写真で見る限り二足歩行型ではなく、上半身を人型にした移動マニピュレータだ。

山善は、ヒューマノイド50台規模のデータ収集拠点を動かす側にいる

機械工具や産業機器を扱う専門商社の山善は、2025年4月に物流向けシステム開発の INSOL-HIGH と業務提携を結び、同年10月には海外メーカーのヒューマノイドを最大50台稼働させるデータ生成センター構想に参画した。

2026年3月26日には、ツムラ、レオン自動機、INSOL-HIGH とコンソーシアム「J-HRTI」を設立した。千葉県沿岸部の約1,400m²に、オペレーターやアノテーター約100名が常駐するデータ収集センターを置き、2026年7月に開業する予定としていた。工程表は、2026年度に「単純タスク(搬送・定型作業)による現場導入」、2027年度に複数タスクへの拡大を置く。

倉庫から出た部品を受け取り、隣の工程へ渡す。RENでの作業は、この「搬送」の段階に重なる。ただし、RENで検証する「フィジカルAIデータ」が J-HRTI のセンターで集めたデータとつながっているのかは、3社のリリースに記載がない。

山善は2025年4月の提携発表で、ヒューマノイドの利点を「現場の大規模な改修や設備変更を必要とせず」「物流施設内の他のシステム(自動倉庫・AGV 等)との親和性も高い」と説明していた。今回の実証は、その「自動倉庫との親和性」を実機で確かめる場にもなる。

CUEBUSは床にモータを敷き、棚側からモータとバッテリーを外した

Cuebus は2015年2月設立で、代表取締役社長兼CEOは大久保勝広氏。会社概要によれば、東京・蔵前の拠点のほかに高知市に研究開発拠点を置く。CUEBUS は、リニアモータを内蔵した床面ユニット「タイル」の上を、荷を載せた「トレイ」が走る構造だ。トレイ側にはモータもバッテリーもない。人の通路を設けずに保管物を詰め、全トレイを同時に動かせる点を特長に挙げる。「世界初のリニアモータ式ロボット倉庫」は同社の表現で、豊田自動織機の発表では「Cuebus社調べ」と注記されている。

最初の導入先は、ビームスの物流拠点「ビームス ウエアステーション」(東京都江東区)だ。豊田自動織機トヨタL&Fカンパニーが拠点全体のエンジニアリングを担い、2024年9月に CUEBUS を入荷工程に納入した。トレイ2枚を協調制御して、人手で運んでいたZラックを自動搬送し、RFIDの自動検品ゲートと組み合わせている。

CUEBUS Pallet 200kg の全体イメージ(Cuebus 公式リリースより)

出資元にはトヨタ紡織(2023年8月)、豊田自動織機(2024年12月、シリーズBエクステンション)、三菱HCキャピタル(2025年12月)などが並ぶ。実証先も、日本通運の仙台卸町物流センター(二階層の「CUEBUS 75Lモデル」、2025年12月19日開始)、JR西日本の車両所倉庫(2025年12月1日開始)と広がり、2026年9月には国土交通省の自動物流道路の実証の実施者にも採択された。

同じ9月に発売した「CUEBUS Pallet 200kg」は、最大200kgのパレットを最高2.0m/sで運ぶ。タイルは1辺1,350mm・重さ45kg、動作温度は−25〜60℃とされる。RENに入る CUEBUS がどのモデルかは明らかにされていないが、写真ではケースを多段に収めた立体フレーム型が写っている。

問われるのは、受け渡し1回ごとの確かさ

CUEBUS は人の通路を消すことで密度を稼ぎ、ヒューマノイドは人のために作られた空間に入れることを価値にする。RENの実証で両者が接するのは、倉庫の出庫口という一点だ。ケースを取り損ねないか、1回の受け渡しに何秒かかるか、止まったときに誰がどう復旧するか。コンベヤや搬送ロボットで同じ受け渡しをした場合と比べてどうかが、導入を検討する側の関心になる。

川崎に構築された AutoStore は、工程ごとに別の機構を並べる構成をとった。Locus Robotics は把持機構そのものを買いに行った。その間に汎用のヒューマノイドを置く意味は、成功率や停止頻度で示すほかない。これまでの作業成功率は、UBTECH の「実験室環境で75%」のように条件ごと読むべき数字だった。RENの結果がどの粒度で公開されるかで、この組み合わせがほかの工場の判断材料になるかが決まってくる。


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