産業と実装

倉庫ロボットの残り3〜4割をどう掴むか。Locus RoboticsがNexera Roboticsを買収、5年6世代の把持機構を統合

倉庫向けAMR大手のLocus Roboticsが、把持技術のNexera Roboticsを買収した。柔軟なメンブレン構造とAI把持知能を組み合わせたエンドエフェクタは5年・6世代にわたって開発され、数千時間・数千万回のピッキングで検証されたという。吸着だけでは対応できない3〜4割のSKUが狙いになる。

倉庫向け自律搬送ロボット(AMR)大手の Locus Robotics(米マサチューセッツ州ウィルミントン)が、把持技術の Nexera Robotics(カナダ・バンクーバー)を買収した。2026年5月19日の発表で、買収額は記載されていない。

Nexera Robotics の買収(Locus Robotics)

何を買ったのか

統合されるのは、特許取得済みのエンドエフェクタ(ロボットアーム先端の把持機構)だ。リリースの説明はこうだ。

“The patented end-effector combines AI-driven grasping intelligence, onboard sensory inputs, computer vision, and a patented soft membrane structure to adapt dynamically to the physical characteristics of each item.”

そして開発の来歴が具体的に書かれている。

“Developed over five years and refined through six generations of continual improvement, the patented end-effector has been validated with thousands of hours and tens of millions of picks, including the broadest SKU testing with commercial partners.”

対応できるとされる品目は、倉庫で扱いにくいものが並ぶ。多孔質の織物、緩く袋詰めされた品物、穴あきポリ袋、不定形の梱包、壊れやすい商品、曲面のある製品、小物、表面が不均一だったり包装が薄かったりするもの。

「残り30〜40%」という課題

倉庫の自動ピッキングで長く使われてきたのは吸着(サクション)だ。平らで気密性のある面があれば確実に持てるし、機構も単純で安い。

Nexera CEO の Roy Belak 氏(現 Locus Robotics の Senior Vice President of Robotic Grasping)は取材に対し、吸着だけで対応できるのは倉庫オペレーションの60〜70%で、残りの30〜40%が課題だと述べている。この数値は Locus の公式リリースには含まれず、The Robot Report の取材による。

30〜40%という比率は、自動化の経済性を左右する。全体の3分の1が人手に残るなら、その工程のためにラインと人員を維持しなければならない。逆にそこが自動化できれば、設備の稼働時間そのものが変わる。

Belak 氏は課題の所在についても「100% プロプリオセプション(自己受容感覚)とデータの指標とフィードバック機構だ」と述べている。掴めたかどうかを機構自身が把握し、失敗を検知して次の動作に反映する——把持の難しさは、掴む力の設計より掴んだ結果を知る部分にある、という指摘だ。

規模とタイミング

Locus は2026年3月の MODEX で新製品 Locus Array を正式ローンチしている。200件超の応募から Best New Innovation のトップ3ファイナリストに選ばれた製品で、統括プラットフォーム LocusONE は世界360拠点超で17,000台以上のロボットを管理しているとされる。顧客は小売・ヘルスケア・3PL・産業の150社超、350拠点超。

つまりすでにモノを運ぶ台数を持っている会社が、掴む技術を買ったという構図だ。Locus CEO の Rick Faulk 氏は「今日の倉庫ロボティクスのフロンティアは、企業規模でのAI駆動モバイルマニピュレーションだ」「数百万種類のSKUを速度と精度の両方で効率的に掴めることが、次の10年の価値が生まれる場所だ」と述べている。

人が商品のところへ行く(person-to-goods)方式から、ロボットが商品を取りに行く(robots-to-goods)方式へ移るとき、必ず「掴む」が要る。搬送だけなら回避できていた問題が、そこで正面に出てくる。

公表されていないこと

  • 買収額: 非公表と明示されているのではなく、リリースに記載自体がない
  • Nexera の従業員数・調達額
  • 統合版 Locus Array の正式提供開始日: 「今後数か月のうちに利用可能になる見込み」とのみ
  • 製品名の表記ゆれ: Locus 公式サイトのリリース本文では一貫して “the patented end-effector” と書かれ、製品ページでは “NeuraGrasp” と表記される

日本の物流現場でも、多品種少量のピッキングは自動化の最後の砦として残り続けている。吸着で取れないものをどうするかは、機構の話であると同時に、どのSKUを自動化の対象から外すかという運用設計の話でもある。60〜70%という数字は、その線引きを考えるときの出発点になる。


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