棚を運ぶロボット4,000台の隣に、3本指の双腕ヒューマノイド。ギークプラスが「Gino」を日本で初公開
倉庫ロボットのGeek+(香港上場)が、双腕・3指ハンドの車輪型ヒューマノイド「Gino」を国際物流総合展2026で日本初公開した。日本法人の発表は1タスクあたり約30%の時間短縮を示す一方、自由度や可搬重量、国内の導入時期・導入先は書いていない。開示では具身智能の研究開発に半期で4,450万元を投じている。
棚やコンテナをロボットが作業者の元へ運んでくる倉庫でも、そこから品物を取り出すのは人の手だった。その手元に、3本指のハンドを持つ双腕のロボットを立たせる構想が、東京の展示会場に持ち込まれた。
物流ロボットの株式会社ギークプラス(東京都渋谷区)は2026年8月18日、中国・北京の Geek+(北京極智嘉科技、香港証券取引所: 2590)が開発したヒューマノイド「Gino(ジーノ)」を、9月8〜11日の「国際物流総合展2026」(東京ビッグサイト)で国内初公開すると発表した。ブースには複数台を並べ、倉庫内での協調動作を見せるとしていた。

日本法人の発表は、仕様より「作業の分け方」を説明している
リリースは Gino を、単一動作を繰り返すロボットとは異なり「人間からの複雑な作業指示や周囲の状況を理解し、タスクを実行可能な具体的な実行手順へ分解しながら動作する」と説明する。知能の土台は、2026年7月17日に上海の世界人工知能大会(WAIC 2026)で発表された統合AIフレームワーク「Gravity」だ。指示を手順に分ける側を AR Transformer、滑りや接触の変化を事前に予測して動きを作る側を Diffusion Transformer / Gravity 4D が担う。
性能を数値で示した箇所は1つだけだ。手と足回りを同時に動かす「全身協調制御」により、「掴み終える→旋回する→移動する→腕を上げる」を順番に行う場合と比べ、ピッキング1タスクあたりの作業時間を約30%削減できるとする。つかむ例には、スナック袋、透明包装のパン、ぬいぐるみといった形の定まらない品物を挙げる。
一方、自由度、可搬重量、身長・重量、価格は、日本法人の8月18日と8月20日のリリースのどちらにも書かれていない。機構についての記述は「目(カメラ)と頭脳(AI)と手(双腕・3指ハンド)を連動させ」という一文までだ。Geek+ の2025年度年次業績発表は Gino1 を「wheeled humanoid」と書いており、車輪で移動する機体であることはここで確認できる。

棚ごと運ぶ仕組みの「最後の手作業」にGinoを置く
ブースに並んだのは4製品だった。Gino のほかは、高密度保管の「SkyCube」、高さ3.9mの棚を使う GTP(Goods-to-Person、商品が作業者の元へ来る方式)の「PopPick Lite」、最大12mの高層ラックを使う「RoboShuttle Air」で、いずれも品物を作業者の手元まで運ぶ仕組みだ。運ばれてきたコンテナから品物を取り出す工程は、人の場所として残っていた。
8月18日のリリースが用途に「AMRや専用工作ステーションと連携したピッキングから搬送までの一連作業の自動化」を挙げるのは、その場所を指す。Geek+ は2026年の中間業績の発表で、ヒューマノイドと AMR を組み合わせ「保管、ピッキング、ハンドリング、検品」を担う「productivity fleet」を作ると書く。年次業績発表は、2026年に Gino1 の完成機を量産して商用に投入する目標を置いていた。
国内では矢崎総業・山善・Cuebus の実証が、ロボット倉庫の出庫品をヒューマノイドが受け取る構成をとった。米国の Locus Robotics は Nexera Robotics を買収し、把持機構を自社に取り込んだ。Geek+ は、搬送・保管の設備と人型の作業機を同じ会社でそろえる形になる。

開示に書かれた具身智能の費用は、半期で4,450万元
2025年に香港で上場した Geek+ の2025年度売上高は31億7,101万元(前年比31.6%増)で、中国本土以外が75.3%を占める。調整後純利益は4,382万元と黒字に転じた。研究開発費は2億8,205万元から3億3,508万元に増え、同社は理由に具身智能(エンボディドAI、身体を持って物理世界で動くAI)などへの投資を挙げる。2025年7月には具身智能の子会社を設立している。
2026年上半期は、新規受注23億8,500万元(35.5%増)、売上高12億8,400万元(25.3%増)。調整後純損失は前年同期より32.1%縮小し、具身智能の研究開発投資4,450万元を除くと1,610万元になる。半期売上高の約3.5%を、まだ売上の立っていない事業に回している計算だ。
同じ発表は具身智能の受注について「複数のフォーチュン・グローバル500企業との提携で好スタートを切った」と書くが、社名、金額、台数、それが Gino なのかロボットアーム型のピッキングステーションなのかは示していない。3年以内に「具身智能製品」の累計出荷を1万台超にする目標にも内訳はない。Agility Robotics の S-4 のようにヒューマノイドの販売実績を数字で開示した例と比べると、Geek+ の開示で確認できるのは現時点では研究開発費の額までだ。
日本で扱うのは、Geek+ の関連会社として計上される合弁会社
株式会社ギークプラスは2017年設立で、会社概要は北京の Geek+ と日本資本のジョイントベンチャーだと説明する。Geek+ の年次業績発表が関連会社(associate)として名前を挙げるのは「Geekplus Co., Ltd.」1社で、日本法人の英文表記と同じだ。2025年度の持分法による投資利益は1,500万元(前年は2.4万元)だった。
国内のロボット販売実績は4,000台強。2026年6月10日にはトヨタ自動車の複数工場への搬送型AMR導入を発表し、400台強が工程間搬送を担うとした。Gino のリリースが AMR との連携を用途に挙げている以上、国内での最初の候補は、同社の搬送ロボットがすでに動く現場だと読める。
国内でいつ、どこに、いくらで入るのか
日本法人のリリースは、国内での導入時期、導入先、価格、保守体制に触れていない。日本の現場での稼働記録もまだ公表されていない。公表されているのはここまでだ。
Geek+ 自身は PopPick Lite について「マニュアルピッキングの4〜10倍の作業効率」と、人手を基準にした倍率を出している。Gino の約30%という短縮は、順番に動かした自社の動作との比較だ。どの品物を、どの頻度で扱ったときに、人の手と比べてどうなのか。同じ物差しの数字が出てきたとき、棚を運ぶ仕組みの手元にヒューマノイドを置く意味が比べられるようになる。
出典
- 【プレスリリース】ギークプラス、ヒューマノイド「Gino」を日本国内で初公開(ギークプラス 公式) — 2026-08-18
- 【プレスリリース】ギークプラス、「国際物流総合展2026」に出展(ギークプラス 公式) — 2026-08-20
- 【プレスリリース】ギークプラス、トヨタ自動車の複数工場に搬送型AMRを導入(ギークプラス 公式) — 2026-06-10
- 企業情報(ギークプラス 公式)
- Annual Results Announcement for the Year Ended December 31, 2025(Beijing Geekplus Technology / Geek+ IR) — 2026-03-30
- Subscription-Based Services Boom! Geek+ Reports 2026 Interim Results(Geek+ 公式) — 2026-08-28
- Geek+ Debuts Gravity and Its “One Core, Dual Engine” Strategy at WAIC 2026(Geek+ 公式) — 2026-07-17